アディポネクチンは薬で摂取できるの?

ダメージを受けた欠陥の修正や身体の老化・酸化の対策に役立つアディポネクチン。そんな夢のようなホルモンが薬で摂れる可能性について、2013年10月に東京大学が発表。科学誌「Nature」電子版に掲載されました。

アディポネクチンを強化する
内服薬の候補物質を発見

東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科の門脇孝教授、山内敏正講師らの研究グループは、運動ができない場合でも、肥満が土台となるメタボリックシンドロームや2型糖尿病を効果的に治療する内服薬の候補物質を、マウスを用いた実験により発見することに成功した。(中略)アディポネクチンの作用を細胞内に伝える分子である「アディポネクチン受容体」の作用を強めることが新たな治療法となり、肥満や2型糖尿病の人でみられる寿命の短縮を改善させられる可能性がある。

この点に着目した研究グループは、東大の化合物ライブラリーなどに蓄積された614万種類の化合物の中から、アディポネクチン受容体を活性化する「アディポロン(AdipoRon)」(アディポネクチン受容体活性化低分子化合物)を発見した。

引用元:糖尿病ネットワーク「アディポネクチン受容体を強める内服薬を発見 日本発の新薬開発へ」http://www.dm-net.co.jp/calendar/2013/020934.php(2013/11/01)2018/06/12引用

ネイチャー電子版の記事(二次情報になります)によると、東京大学医学部の糖尿病・代謝内科の門脇教授らの研究グループは、肥満によるメタボリックシンドロームや2型糖尿病を効果的に治療する内服薬の物質をマウス実験にて発見しました。それが、アディポネクチンの受容体を活性化する「アディポロン」だったのです。

アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌され、インスリン感受性を高めたり、動脈硬化や炎症を抑制したりする作用をもつホルモン。研究チームはその働きを生かし、体内の細胞に伝達する役割を持つ「アディポネクチン受容体」の作用を強めてアディポネクチンの分泌量をコントロールすることで、肥満・2型糖尿病の改善を見込んでいました。

この発見により、肥満解消が課題となる糖尿病患者の中でも、他の合併症などの影響で運動ができない人たちに対する治療のアプローチが広がったとされています。

アディポロンの投与による効果

肥満や2型糖尿病のマウスを用いた実験では、アディポロンの経口投与によって、血糖値の低下やインスリン抵抗性の改善、脂肪の燃焼など、運動をした場合に近い効果があらわれることを確認した。アディポネクチン受容体には「AdipoR1」と「AdipoR2」がある。AdipoR1は骨格筋や肝臓などに、AdipoR2は肝臓や脂肪組織などにあり、AMPキナーゼやPPARαを活性化させ、ブドウ糖の取り込みや、脂肪の燃焼を促進し、動脈硬化などを予防する作用があるという。研究チームは、AdipoR1とAdipoR2が欠損し、肥満や2型糖尿病になったマウスに高脂肪食を与え続ける実験を行った。その結果、120日後には約7割のマウスが死んだのに対し、1日1回アディポロンを投与したグループのマウスの死亡率は約3割に抑えられ、アディポロンによって生存率が4割上昇することも分かった。

引用元:糖尿病ネットワーク「アディポネクチン受容体を強める内服薬を発見 日本発の新薬開発へ」http://www.dm-net.co.jp/calendar/2013/020934.php(2013/11/01)2018/06/12引用

アディポロンの経口投与によって、血糖値の低下・インスリン抵抗性の改善・脂肪の燃焼などのポジティブな効果が表れました

アディポネクチン受容体は、骨格筋・肝臓にあるAdipoR1と脂肪組織にあるAdipoR2の2つがあります。これらは、ブドウ糖の取り込み・脂肪燃焼の促進・動脈硬化の予防などの作用をもつのが特徴です。

研究チームは、この受容体が欠損している肥満・2型糖尿病のマウスに高脂肪な餌を摂取させ、一方はそのまま、もう一方は1日1回アディポロンを投与させる実験を行いました。120日後に約7割のマウスが死亡したのに対し、アディポロンを投与したマウスの死亡率は約3割にとどまるという結果に。この実験結果から、アディポロンによって生存率が上昇することが明らかになりました。

人間用の薬の実用化には時間がかかる

東京大学の発表は、まだマウス実験の段階で、人間が実際に服用できる薬の完成には至っていません

糖尿病や肥満を治すためには、食事や運動による治療が大切。しかし患者さんの中には、心臓に疾患がある・足腰を痛めている・高齢であるなどの諸事情により、思うように運動ができない人・身体的負荷になってしまう人もいます。もしアディポロンが内服薬化したら、運動制限の必要な患者さんでも、運動をした時と同様の改善効果が受けられるでしょう。糖尿病・肥満治療の進化に期待が高まります。

アディポネクチンを増加させる薬がない今、すぐにできることは生活習慣の見直しです。ウエストが太い人は水泳・ウォーキングをしたり、海藻類や大豆食品を積極的に食べたりすることで、アディポネクチンの分泌増加を促せると言われています。補助的にサプリを摂るのもおすすめ。アディポネクチンを増加させて、健康的な人生を送りましょう!

アディポネクチンの運動模倣効果による糖尿病治療薬開発にも

東京大学医学部付属病院の山内敏正講師率いる研究グループは、アディポネクチン受容体の構造を解明しました。アディポネクチンの発する信号がアディポネクチン受容体を介して細胞に伝えられると、糖と脂質の代謝が促進されるとわかったのです。この作用に注目して細胞内で活性化する内服薬の開発を行い、世界で初めて成功した事例になります。

開発した内服薬をマウスに投与して実験を行ったところ、細胞内のカルシウム濃度が上昇し、運動時と同程度の数値を記録。加えて、長寿遺伝子SIRT1の活性化にもつながりました。長寿遺伝子SIRT1は、体内のミトコンドリアの働きを向上させてくれる組織です。ミトコンドリアは、筋持久力を向上させたり、糖・脂質代謝を活発にする働きが期待できます。

今回の研究結果から、開発した内服薬には運動時と同じような効果を得られると判明しました。加えて、血糖値を正常に整える作用も示しています。

2030年には、全世界における生活習慣病患者がピークを迎えるといわれているため、実用化に向けて取り組んでいるそうです。今回の研究成果が生活習慣病を克服する薬として普及できれば、健康長寿の実現が可能になるでしょう。同時に、開発した薬を世界に向けて発信することで「日本の経済的成長も見込めるだろう」と山内講師は見解を述べています。

参照元

アディポネクチンの運動模倣効果のメカニズム解明による画期的糖尿病治療薬の開発http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/jisedai/seika/5ls_40.pdf

糖尿病治療薬にもアディポネクチンを強化させる働きが

“インスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾン(アクトス®錠/以下本剤)は2型糖尿病を適応疾患として1999年に上市されました。核内受容体のPPARγに作用し、脂肪細胞の分化を促進、肥大化した脂肪細胞を正常の小型脂肪細胞に置き換えます。これにより筋肉・肝臓・脂肪での糖取り込みを促進、肝臓で糖新生を抑制し血糖値を低下させます。またTNF-α、IL-6等の悪玉アディポサイトカインが低下し、抗動脈硬化作用を持つアディポネクチンの血中濃度が3倍等に上昇。またマクロファージに対する抗炎症作用や血管内皮機能改善など多くの研究結果が報告されています。15~30mgを1日1回朝食前後に服用し、最大用量は45mg。唯一のチアゾリジン系薬剤ですが、ジェネリック薬品は18社から発売されています。”

引用元

第5回 チアゾリジン薬 | 糖尿病治療薬の特徴と服薬指導のポイント | 糖尿病情報スクランブル | 糖尿病リソースガイドhttp://dm-rg.net/contents/okusuri/005.html

チアゾリジン薬は、骨格や肝臓におけるインスリンの総合的な作用をサポートする働きがあります。インスリンの分泌を直接促すわけではないので、単独で使用しても低血糖を招くことがほとんどありません。

また、チアゾリジン薬はアディポネクチンを増やして作用を強化する働きが報告されています。同時に取り込むことで、インスリンの働きを強くして、アディポネクチン数値も向上させてくれるのです。実際に、アディポネクチンの血中濃度が3倍に上昇した実績が示されています。他にも、体内で活動しなくなった細胞・細菌を取り込んでくれるマクロファージの抗炎症作用や血管内にある細胞の機能の改善に働きかけてくれると多くの研究機関が報告しています。

服薬のポイント

上記がチアゾリジン薬を使用するポイントです。チアゾリジン薬は、尿細管でNaと水を吸収して体内に溜める傾向にあるので、心不全や浮腫が出やすくなります。なるべく少量から使用するようにしてください。使用中の血糖値降下作用は服用をとめたあともしばらく持続します。薬剤変更や切り替え時に注意して使用すると良いでしょう。

参考にした資料・サイト

科学誌「ネイチャー」電子版A small-molecule AdipoR agonist for type 2 diabetes and short life in obesity

糖尿病ネットワーク「アディポネクチン受容体を強める内服薬を発見。日本初の新薬開発へ」