アディポネクチンと動脈硬化

動脈硬化に対して期待される
アディポネクチンのはたらき

アディポネクチンというホルモンには、血管のダメージを修復するはたらきがあります。血栓などによる血管のトラブル対策としては、アディポネクチンが重要な役割を果たすことになるでしょう。

アディポネクチンの
動脈硬化へのはたらき

アディポネクチンというホルモン自体、血管のダメージを修復するはたらきがあるので、血栓などによる血管のトラブル対策としてはアディポネクチンがとても重要な役割を果たすことになるでしょう。

すなわち、アディポネクチン欠損マウスは脂肪組織におけるCRP発現が増加しており、高脂肪・高ショ糖負荷により著名なインスリン抵抗性を発症し、血管擦過により有意な新生内膜肥厚を生ずるが、これらの異常はアディポネクチン補充により正常化した。したがって、アディポネクチンは高インスリン抵抗性・抗炎症作用を有するアディポサイトカインであると考えられ、CRPが心血管イベント予測因子となる一因としてアディポネクチンとの拮抗作用に基づく可能性が考えられた。

門脇孝. "アディポネクチンとその受容体". フジメディカル出版.(参照 2008-06).2018/5/14引用

遺伝子操作によってアディポネクチンを生み出せなくなったマウスは、血中の糖や脂質のコントロールができなくなり、血管への負担を増やしてしまいます。その結果、血管の内側に傷がつき、修正のために新生内膜が厚くなる…といった悪循環に。しかし、このような異変は、アディポネクチンを後天的に補充した結果、正常なはたらきに戻ることが確認されました。 アディポネクチンには、血中の糖をコントロールできなくなる「インスリン抵抗性」を改善し、さらに傷ついた血管の壁を修復する作用があり、それらが動脈硬化といったさまざまな病気・症状にも好影響を与えるのです。

動脈硬化は様々な
メタボ症状と関係あり

そもそも、動脈硬化に至るにあたっては高血圧や高脂血症、肥満といった、いわゆるメタボリックシンドロームの各種症状が大いに影響を及ぼします。

動脈硬化発症の基盤病態であるメタボリックシンドロームは、一般臨床検査に表れないアディポネクチンの低下やCRPの上昇などの異常を有するため、高度に動脈硬化惹起性となっていると考えられる。

門脇孝. "アディポネクチンとその受容体". フジメディカル出版.(参照 2008-06).2018/5/14引用

CRPとは、血中の特定の蛋白を測定する値です。体内のどこかで炎症が起こると24時間以内に高値になるため、炎症マーカーとして炎症性疾患の有無を測る検査で取り入れられます。2005年からは、国際糖尿病連盟が作成した「メタボリックシンドロームの世界統一診断基準」にもこの項目が加えられました。

上記論文の他、さまざまな研究により、メタボが引き金となって動脈硬化を発症することが確認されています。

アディポネクチンと冠動脈疾患の関連性

低アディポネクチン血症は動脈硬化の危険因子であることがわかっています。

男性冠動脈疾患症例におけるアディポネクチンの意義を検討したところ、アディポネクチン血中濃度は、冠動脈疾患においても年齢、肥満度を合わせた対象に比し有意に低値にシフトしていた。そして、既知の動脈硬化危険因子を補正した検討において、アディポネクチン血中濃度が4μg/ml未満であると有意に冠動脈疾患罹患率が高値をとることも明らかとなった。

引用:9.動脈硬化とアディポネクチン 木原進士

米国のアディポネクチン濃度の高い群と低い群、中等度の群を比較した研究においても、血中のアディポネクチン濃度が高い群は、他の群に比べて新たに心筋梗塞を発症する確率が明らかに低いことが報告されています。また、アディポネクチンの血中濃度は、血管内皮依存性の血管弛緩反応と有意な正相関をもつため、アディポネクチンの測定をすることは動脈硬化初期段階でも有効であり、動脈硬化のリスクや発症指標としても活用できる可能性も示唆されています。

また、アディポネクチンは傷ついた血管局所に集積し、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞、マクロファージに働きかけることで、過剰な血管リモデリング反応である動脈硬化を抑制する働きも報告されています。これは、アディポネクチンの血中濃度を増加させることで動脈硬化を抑制することができ、治療法としての活用の可能性が強く示唆されているということです。

他にも、新たな機序としてアディポネクチンは血管内皮細胞に作用することで、動脈硬化の初期変化で重要なアポトーシスを抑制すること、抗炎症因子を介した作用で動脈硬化の最終段階となる心血管症状発症を予防する作用もあることが報告されています。つまり、低アディポネクチン血症は、狭心症や心筋梗塞といった冠動脈疾患の発症から進行、心血管症状の発症まで、血管系疾患のすべての段階に直接関わるアディポサイトカインであることが示唆されています。

アディポネクチンと動脈硬化の関連や波形にあるメカニズムの研究によって、動脈硬化の予防や改善、そして心血管系の疾患の予防への活用が期待されています。

冠動脈疾患予防の薬物治療とアディポネクチン増加

冠動脈疾患予防の薬剤はメタボリックシンドロームの予防にも有効であると考えられています。現在使われている代表的な薬剤には、チアゾリジン誘導体、αグルコシターゼ阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)、フィブラート薬があります。

αグルコシターゼ阻害薬は内臓脂肪量を減少させ、チアゾリジン誘導体とフィブラート薬はアディポネクチンの転写を促進、ARBは間接的にアディポネクチンを低下させない作用があることがわかっています。また、スタチンに関しては、冠動脈疾患のあるIGT症例に対するプラバスタチンの投与がアディポネクチンを増加させ、食後血糖2時間値も低下させることが報告されています。こういった薬剤の病態による作用機序は様々ですが、糖尿病発症抑制やメタボリックシンドローム予防のための薬剤という認識から、アディポネクチンの維持や増加に働く薬剤としてもとらえることができます。

メタボリックシンドロームは一般的な臨床検査ではその状態の確認が難しく、高血糖や動脈硬化、高血圧といった他の疾患や病態が認められることで診断になります。中でも、動脈硬化をはじめとする血管系疾患は致死リスクも高く危険な為、血管病予防に対しての積極的な治療が求められています。こういった背景によりアディポネクチン増加効果のある薬剤は、血管病予防有力な手段となると考えられています。

アディポネクチンを
もっと詳しく知る

そもそも動脈硬化は
どんな病気?

動脈硬化の症状と原因

動脈硬化は、血管のしなやかさが失われて動脈が硬くなってしまう病気です。食生活の乱れ・運動不足・飲酒・喫煙・ストレスなどの生活習慣が大きく影響しています。

動脈が硬くなると血管内部に粥腫(じゅくしゅ)というコレステロールのこぶが発生。粥腫(じゅくしゅ)が大きくなると、血管を詰まらせてしまいます。血管が詰まると血流が滞り、必要な栄養素や酸素が行き渡らなくなってしまうのです。

その結果、「心臓に負担がかかる」「臓器が正常に機能しなくなる」「臓器が壊死する」「血管が破けやすくなる」といった症状が起こるリスクが高くなってしまいます。

動脈硬化の診断基準

ここでは足の動脈硬化により血管が詰まる症状「閉塞性動脈硬化症」を診断する基準についてご紹介します。

病院でははじめに問診で、「いつから症状が出たか」「どのような痛みがあるか」「家族歴はあるか」について確認。その後、皮膚の色を調べる視診、脈拍を調べる触診を行ないます。「足を上げると蒼白になる・下げたら赤くなる」場合は、動脈硬化の可能性が高いでしょう。

ほかにもABPI、血管造影という診断があります。

動脈硬化の治療法

閉塞性動脈硬化症の症状は、軽症・中等症・重症に分けられます。

軽症時は、ほとんど違和感を感じることはありません。

中等症は、歩いた時にときどき足が痛くなる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」という症状が目安。症状の進行が進んだ中等症だと、安静時にも痛みを感じてしまいます。

潰瘍や壊疽(えそ)を引き起こしてしまうと重症レベルです。

症状のレベルによって治療法が異なる動脈硬化ですが、主な治療法は「食事療法」「運動療法」「薬物療法」「手術」になります。各治療法の特徴について解説しているので、ぜひご覧ください。

食事療法

食事療法は、バランスの良い食事を摂ることで動脈硬化を改善する治療法です。たんぱく質は肉よりも魚や大豆から摂取したり、アルコールは控えたりします。

腹八分目・よく噛む・薄味を徹底して、継続して行なうことが大切です。

運動療法

運動療法は有酸素運動を推奨しています。ゆっくりと多くの酸素を取り入れられるので、効率的な脂肪燃焼が可能に。1回30分以上の運動を週3~4回行なうのが理想です。1日30分以上行なう理由は、脂肪がエネルギーに使われるまでに20~30分ほどかかるからです。

ただし、体調がすぐれない場合の運動は逆効果なので、体調管理に注意してください。

薬物療法

薬物療法は主に中等症から重症の方に行なう治療法です。動脈硬化治療で使われる薬は、抗血栓薬と血管拡張薬が中心。

手術

動脈硬化の治療では、バイパス手術という方法を採用しています。

バイパス手術では、人工の血管と自分の静脈を利用して新しく血液の通り道を作ることで、血液の流れを保つことができます。安静時にも痛みが出るようであれば、手術を検討しましょう。

アディポネクチンを
もっと詳しく知る

この記事を作るのに参考にした記事・文献・サイト

アディポネクチンの
様々な病気・症状への効果