アディポネクチンと関節炎

アディポネクチンが関節炎に与えるよい影響

アディポネクチンは動脈硬化の予防やメタボリックシンドロームだけでなく、関節炎を抑える役割を持っていると言われているホルモン。なぜアディポネクチンが関節炎を防いでくれるのか、そもそも関節炎とはどのような病気なのかを紹介します。

アディポネクチンが多いと炎症の原因物質が減少

内臓脂肪から放出される物質はまとめてアディポサイトカインと呼ばれており、悪玉物質(インターロイキン-1β)と善玉物質(アディポネクチン)に分けられます。その中の悪玉物質インターロイキン-1βがが、血流を通って関節へと移動すると炎症の原因に。関節にたどり着いたインターロイキン-1βは炎症が起きるよう命令を出してしまい、結果として関節炎を発症します。

このインターロイキン-1βの影響を減らしてくれるのが、善玉のアディポネクチンです。とはいっても、アディポネクチンが悪玉に直接作用するわけではありません。

適度な体脂肪量の人の血中には、「アディポネクチン」という善玉アディポサイトカインが多くあります。しかし、内臓脂肪が過剰に蓄積するとアディポサイトカンの分泌バランスが崩れ、血液中の「アディポネクチン」は減少します。
反対に、悪玉アディポサイトカインが増加すると、糖尿病や、心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳卒中(のうそっちゅう)などの動脈硬化性疾患(どうみゃくこうかせいしっかん)が起こりやすい状態になることがわかってきました。
引用元:大塚製薬 メタボリックシンドローム教室「発見!脂肪組織の働き」

内臓脂肪が適度な量だった場合、インターロイキン-1βの悪玉物質の放出量は善玉物質であるアディポネクチンより少なくなります。

しかし、内臓脂肪が増えることによりこの放出量が逆転。悪玉物質が善玉物質よりも多く放出され、関節炎だけでなく糖尿病や心筋梗塞のリスクが高まります。適度な内臓量を保つ、または増えすぎた内臓脂肪を減らすことで、アディポネクチンの量が増え悪玉が減少。悪玉物質が関節に与える炎症反応が軽減されるといった仕組みになっています。

内臓脂肪が放出する悪玉物質について

内臓脂肪と皮下脂肪のどちらが見た目に悪いかは別にして、医学的には内臓脂肪が危険と言われています。悪玉のほうには、PAI-1(プラスミノゲンアクチベーターインヒビター)、TNF-a(腫瘍壊死因子a)、レジスチン、アンジオテンシノーゲン、IL-1β(インターロイキン1β)などがあります。
PAI-1は、血をかたまらせ、血栓(血のかたまり)をつくりやすくし、TNF-a、レジスチンはブドウ糖の取り込みに必要なインスリンの作用を妨げます。アンジオテンシノーゲンは、末梢血管を収縮させ、血圧を上げる作用があります。
心筋梗塞といった血管疾患も、悪玉サイトカインが心臓の血管壁に炎症を起こすことが原因と考えられるようになりました。
引用元:稲島 司 『医師が実践する 超・食事術~エビデンスのある食習慣のススメ』

アディポサイトカインを放出する内臓脂肪ですが、医学的には手足に蓄積する皮下脂肪よりも危険と言われています。それは内臓脂肪が放出する悪玉物質がインターロイキン-1βだけではないうえ、その他の悪玉物質も体に悪影響を及ぼすからです。

例えばPAI-1(プラスミノゲンアクチベーターインヒビター)の場合、血を固めて脳梗塞の原因となる血栓を作りやすくします。また、アンジオテンシンノーゲンと呼ばれる悪玉物質は細い血管を縮めて血圧を上げさせるなど、関節炎だけでなく様々な病気の原因に。

心筋梗塞に関しても、アディポサイトカインの悪玉物質が心臓にある血管の壁に炎症を起こすことで発症すると考えられるようになりました。

アディポネクチンを
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そもそも関節炎とは

関節炎の症状と原因

変形性膝関節症

変形性膝関節症は関節が痛むことが特徴で、関節リウマチと間違えられやすい症状です。

変形性膝関節症は炎症を起こす関節リウマチとは違い、膝の関節にある軟骨がすり減ることで痛みを引き起こします。本来、関節にかかる負担は筋肉や靭帯などが軽減・分散させ、調整している状態。しかし、歳をとったり関節運動の頻度が増えたりすると軟骨がすり減り、関節への負担が大きくなります。

また、骨折することで骨の向きが変わってしまい、負担を軽減できなくなるというケースもあるのでケガには注意してください。症状が進行し重症になってしまうと、さらに軟骨がすり減り、骨同士がこすれます。その結果として関節の表面がデコボコになってしまい、膝の動きに障害が生じることも。関節の可動域が制限され、動かすたびに痛みが走るので生活に大きな支障をきたします。

痛みは安静にしているときや寝ているときにも続くため、早めの治療が必要です。

関節リウマチ

関節リウマチは指や肘、膝など体の様々な関節で炎症が起きる病気です。発症する原因はまだはっきりと分かっていません。しかし、病気の進行状況については少しずつではありますが判明してきています。

関節内で、関節をスムーズに動かすための液体を作る滑膜が何らかの原因で炎症を起こし、滑膜の細胞が異常なまでに増殖。滑膜内にある血管の数が増えてしまい、リンパ球やマクロファージなどの白血球が滑膜内へ入ってしまいます。すると関節内で自分自身の細胞を攻撃する自己免疫が発生し、白血球のマクロファージが炎症の原因となるTNF-αを放出。TNF-αの働きにより骨を破壊・吸収する破骨細胞や軟骨の組織が増殖して骨が破壊され、関節が変形した結果として関節リウマチを発症します。

関節炎の診断基準

変形性膝関節症の場合はX線撮影での診断を行います。軟骨の部分はレントゲンには写らないので、骨と骨の間にどれだけ隙間が開いているか、骨の形がどうなっているかで診断。関節リウマチのような他の病気である可能性があった場合、血液検査や関節液の検査を行ってさらに詳しく調べていくのが一般的です。また、関節の軟骨や滑膜、靭帯や膝関節の間でクッションの役割を果たしている半月板の状態を診る際にはMRI撮影で検査をすることもあります。

関節リウマチの場合、アメリカリウマチ協会が公表している関節リウマチ診断基準にのっとって診断。基準として以下の7項目があります。

上記のうち4つの項目に当てはまると関節リウマチと判断されるので、自分がいくつあてはまるのか一度確かめてみましょう。

関節炎の治療法

運動療法

関節炎を起こしている際の運動療法では膝周囲の筋肉トレーニングを行います。筋力を鍛えることで関節への負担を軽減する効果があり、今後手術を受けることになった場合に筋力が維持されていることで術後の回復にも有効。やり方が分からない場合は医師や理学療法士に相談、指導を受けて運動を継続することが大切です。

また、関節リウマチの場合は運動だけでなく関節を温める温熱療法や日常生活の動作訓練を行う作業療法といった療法があります。

装具療法

膝の変形によりバランスが不安定になってしまった際、膝の補強や負担軽減を目的として装具を使用します。特に日本では、膝の内側の軟骨からすり減って徐々にガニ股となるケースが多め。その療法としては靴の中に外側が高くなっている中敷きを用いて足が内側に向くよう調整する方法があります。また、関節リウマチの装具療法では作業療法にて、関節の機能を補うための道具を医師や作業療法士の指導を受けながら作ることもあるので、覚えておきましょう。

文献・サイト