アディポネクチンとがん

がんに期待される
アディポネクチンのはたらき

いくつかの研究調査では、アディポネクチンががん細胞の増殖を抑制したり、細胞周期を停止させるといったはたらきがあるとしています。

乳がんや骨髄系白血病で
アディポネクチンとの関係を確認

例えば、乳がん細胞株であったり、骨髄球系白血病の細胞株などの一部で確認できたもので、他にもマウス実験ではアディポネクチンを投与することで皮下腫瘍の進行を抑えたという結果も見られます。

アディポネクチンは
複数の物質を介してがん細胞に影響!?

もっとも、アディポネクチンの抗がん作用がきちんと解明されたわけではありません。複数の物質を介して、結果的にがん抑制につながったり、がん細胞株の活性化を抑えたりするといった仕組みは、いくつかわかっているものもあるといった状況。

がん細胞の多くが積極的に糖やエネルギーを取り込むことと、アディポネクチンはもともと糖の取り込みや燃焼を促進するはたらきがあることとは、なんらかの関連性があるとも推察されていて、今後のさらなる研究成果が待たれるところです。

がんと低アディポネクチン血症の関係性

アディポネクチンとがんの関連においては、ケース・コントロール研究がされており、乳がん、子宮内膜がん、前立腺がん、胃がん、急性骨髄性白血病の患者おいて、血中のアディポネクチン濃度の低下が認められています。

乳がんにおいて、閉経後の乳がん発症と血漿アディポネクチン値には有意な相関があること、閉経後だけでなく低アディポネクチン血症が閉経前の乳がんの危険因子であることが報告されています。また、低アディポネクチン血症と子宮内膜がんのリスクの関連も示されており、独立した危険因子であると言われています。これらの結果から、女性特有のがんに関して、脂肪組織におけるアディポネクチンの分泌が重要な役割を果たしている可能性が考えられています。

前立腺がんに関しては、コントロール群の前立腺がん患者群に血中アディポネクチン濃度の低下が認められ、低アディポネクチン血症が前立腺がんの進行度とも相関する因子であるという報告があります。また、胃がんも同様の関連が報告されており、低アディポネクチン血症が胃がん(特に胃上部)危険因子となり、進行度との相関性があることがわかっています。他にも、急性骨髄性白血病の小児における検討では、血清アディポネクチン濃度が低くなることが報告されています。これらの結果から、特定のがんにおいて低アディポネクチン血症は、がんの発生危険因子であると示されています。

がん細胞に対するアディポネクチンの作用

アディポネクチンとの関連が示されているがんにおいて、アディポネクチンのがん細胞に対する作用に関しての研究も進められ、アディポネクチンはがん細胞の増殖に対して抑制的に作用していることが報告されています。

しかし、乳がん細胞の細胞株によるアディポネクチンの作用の違いや、白血病の細胞株によるアディポネクチン作用の違いも報告されており、アディポネクチンの作用は細胞種によって違いがあることがわかっています。

他にも、子宮内膜がん細胞株へのアディポネクチン投与によって、がん細胞のアポトーシス誘導、細胞増殖抑制作用が確認され、胃がん細胞株に関しては、アディポネクチン受容体を介してアポトーシス(計画的に細胞を死滅させる働き)誘導と細胞増殖の抑制作用が確認されています。また、マウス実験では胃がん細胞株AZ521の皮下腫瘍、腹膜播種の進行を効果的に抑制することが示されました。

こういった報告からも、アディポネクチンはがん細胞の種類によって異なる作用でがん細胞の増殖を抑制していることが明らかになっており、現在も研究が進められています。

アディポネクチンの抗がん作用

アディポネクチンの抗がん作用は多岐にわたっており、その一つ一つの明確なメカニズムの解明は現在も研究が進められています。

アディポネクチン受容体を介した抗がん作用

アディポネクチン受容体以降の働きで中心的な役割を果たしているAMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)経路は、脂肪酸の合成に重要な酵素FASの働きを抑制しています。このFASは大腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がんとの相関が示されていることから、アディポネクチン受容体によるFAS抑制効果が抗がん効果に関連していることが示唆されています。

また、AMPKはTSC2を活性化し、このTSC2はmTORを抑制することでタンパク合成を制御しています。mTORは大腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、肝臓がん、肺がんとの相関が指摘されているため、この抑制作用は抗がん作用になっていることが考えられます。他にも、多くのがんで活性化がみられるPI3K-Akt経路も、アディポネクチンによるAMPK経路の活性化によって影響を受けていると考えられています。

このように、アディポネクチン受容体によって、がん細胞の増殖に関連する代謝機構が抑制され、抗がん作用になっていると考えられています。

アディポネクチンの抗がん作用

アディポネクチンは、前立腺がん細胞株、肝細胞がん細胞株でのJNKを活性化し、STAT3活性を抑制する働きや、活性酸素(ROS)の産生を抑制することで一酸化窒素(NO)の産生を促進し、MAPK活性化を阻害する働きによって、細胞増殖を抑制し抗がん効果を発揮していることが報告されています。

また、caspase-8の活性化によってcaspase-3、caspase-9を活性化し、がん細胞を死滅させるアポトーシス促進することで抗がん作用となっていることも示されています。他にも、アディポネクチンは細胞増殖作用をもつ因子と特異的に結合することも報告されており、アディポネクチンは受容体と結合しての抗がん作用だけでなく、アディポネクチンそのものが細胞増殖抑制に関わっている可能性が示されています。

がん細胞以外への働きによる抗がん作用

がん腫瘍は、新たに形成された血管によって栄養となる血流を取り込み増大します。アディポネクチンは毛細血管の血管内皮増殖を抑制していることがわかっており、腫瘍への血管新生を阻害することでがんの増大を抑制し抗がん作用の一つになると考えられています。また、アディポネクチンのTNFα産生抑制は、がんに対する免疫機構を介した抗がん作用に関わっている可能性があることも指摘されています。

アディポネクチンを活用した新治療や予防に期待

がん細胞は非常に高い増殖能を持った細胞の集団です。つまり、がん細胞の増殖、成長には通常細胞以上に細胞内へのエネルギー源の取り込みが必要といえます。実際に、多くのがん細胞で糖の取り込みの亢進がみられ、代謝も通常の細胞とは異なっていることがわかっています。アディポネクチンは糖の取り込みや燃焼系システムに深く関わり、調節機能を持っていることから、がん細胞と通常細胞のアディポネクチンに対する反応、応答は違いがあることが予測されます。

このことらかも、アディポネクチンのがん細胞に対する反応や、作用機序を明らかにすることは、新たながん治療やがん予防につながることが期待されています。

肥満と関係あり!?
がんと脂肪細胞の相関性とは

あまり知られていないかもしれませんが、がんは肥満と関係があるともいわれています。

がんの種類によって違う
BMIや肥満予防との関係

アメリカの研究によると、食道がんや大腸がん、肝臓がん、胆嚢がん、膵がん、腎臓がんによるがん死はBMIと関係があるとされています。

一方で、肥満予防が大腸がんや乳がん、子宮内膜がんなどの発症を抑えるというレポートもあります。

がん細胞は脂肪組織に
囲まれているものが多い

そもそも、がん細胞の多くは脂肪組織に囲まれていて、消化器系がんなら内蔵脂肪、乳がんなら皮下脂肪となんらか関係があるのではないかという指摘もあるほど。

脂肪細胞は善玉ホルモンも悪玉ホルモンも
分泌する

脂肪細胞はいろいろなホルモンを分泌していることが知られていますが、善玉ホルモンとされるアディポネクチンやレプチンだけでなく、悪玉ホルモンとされるTNF-αや遊離脂肪酸などもあり、メタボリックシンドロームとの関係も含めて注視されている部分です。

アディポネクチンを
もっと詳しく知る

そもそもがんはどんな病気?

がんの症状と原因

がんは、通常の細胞が何らかの原因により変異し、それが増殖して腫瘍化したもののうち、悪性のものを指します。

がんには多くの種類がありますが、もっとも多い原因は「生活習慣」からくるものです。飲酒・喫煙・ストレス・乱れた食生活・運動不足などが当てはまります。それ以外では、特定の菌による「感染」、特定の発がん性を有する化学物質に対する「接触・吸入」も原因となり得ます。

初期のがんには、違和感や痛み(がん性疼痛)といった症状はありません。しかし症状が進行してがん細胞が増殖するにつれ、隣接する細胞や組織にがん細胞が入り込み、刺激を与えて痛みを生させるように。また、増殖したがん細胞が組織に圧力を加えると、組織の正常な機能が失われてしまいます。

がん性疼痛にはさらに種類があります。がん自体が周囲の組織に広がることで引き起こす痛みの他、寝たきりの状態が続き筋肉が痩せたり関節が硬くなったりすることが原因で起こる痛み、またがん治療(手術・抗がん剤治療・放射線治療など)の副作用による痛みです。

これらの痛みは患者の生活に悪影響を及ぼすため、治療すべきとされています。

がんの診断基準

がんの診断にはさまざまな方法が使用されます。

「腫瘍マーカー」と呼ばれる血液検査のほか、画像検査・超音波検査・レントゲン・CTなど、複数の診断方法を組み合わせるのが一般的です。がんが発生した箇所によって診断基準は異なります。

また、のど・消化管・膀胱などに、ライトのついた細い管を挿れて直接観察する検査や、組織を採取して細胞を調べる「病理検査」もがん診断に欠かせません。

がんの治療法

「手術療法」「薬物療法」「放射線療法」が、がん治療の基本です。これを三大療法と呼びます。

手術療法

手術療法はがんの病巣をもとから切り取る治療法です。周りにある組織やリンパ節にがんが転移していれば、一緒に切除します。

手術療法は、検査で見つけられないような小さな転移以外なら、患部を切除できるため、完治する確率が高いのがメリット。一方、体にメスをいれるため、身体の回復に時間がかかってしまうのがデメリットです。

切除した箇所によっては、体の機能や臓器を失うリスクもあります。また、がん再発の可能性も残ります。

薬物療法

抗がん剤を使ってがん細胞を減らしたり、増殖を抑えたりする方法を薬物療法と言います。

抗がん剤は点滴・注射・内服のいずれかで投与するのが特徴。小さながん転移にも効果がある一方で、吐き気・脱毛・倦怠感・しびれなどの副作用が出てしまうのが懸念されます。

しかし近年は、副作用の症状を軽くする技術や薬も開発されており、患者の負担が軽減されています。

放射線療法

放射線をがんの病巣に照射して、がん細胞を死滅させる治療法を「放射線療法」と言います。

死滅させたいがん細胞に対して、ピンポイントでアプローチできるのがポイント。効果の高い治療法ですが、放射線の影響で照射箇所の炎症やめまいなどが起こるリスクがあります。

放射線治療を受ける際は、実績のある医師に依頼するようにしましょう。

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この記事を作るのに参考にした文献・サイト

アディポネクチンの
様々な病気・症状への効果