アディポネクチンと高脂血症

高脂血症に期待される
アディポネクチンのはたらき

アディポネクチンが高脂血症対策として期待できるのは、中性脂肪に対するはたらきです。

アディポネクチンは
中性脂肪の消費に役立つ

アディポネクチンには筋肉や肝臓の脂肪酸代謝を向上させるはたらきがあって、それによって健康な状態なら中性脂肪の消費も促進されます。しかし、メタボリックシンドロームになってしまうと、アディポネクチンの分泌量が減り、代謝が落ちてさらに痩せにくくなるという悪循環が起こるわけです。

脂肪代謝に関係するものとしては、遊離脂肪酸(FFA)が挙げられる。FFAは脂肪代謝以外にもインスリン抵抗性の発症に強く関わっており、FFAの異常は高脂血症だけでなく、糖代謝にも関係するアディポサイトカインである。(中略)gloubularのアディポネクチンのマウスへの投与により血中FFAクリアランスが亢進し糖代謝も改善されるという、アディポネクチンの治療応用への第一報がFruebisらのグループにより2001年になされたのを機に、アディポネクチンが肝臓に置いてインスリン感受性を増加させ、糖新生を抑制して血糖を低下させる作用を有するという報告や、脂肪萎縮性糖尿病マウスや肥満マウスにアディポネクチンを投与することで、組織内脂肪酸燃焼を介してインスリン抵抗性が解除されるという報告がある。

引用元:門脇孝.“第 124 回日本医学会シンポジウム「脂肪細胞によるインスリン抵抗性の分子機構」”.http://jams.med.or.jp/symposium/full/124110.pdf(2003/8)2018/5/10引用

肥満が健康に与える影響は大きく、メタボリックシンドロームを発症した場合は高脂血症や糖尿病、高血圧といった生活習慣病にも併発しやすいことが認められています。また、高脂血症を先に発症した場合もさまざまな合併症を引き起こす確率が高くなるため、予防・治療ともにまず脂肪細胞を減らすことが重要とされています。

アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるホルモン「アディポサイトカイン」のうち、善玉の物質(体によい作用を示すもの)を指します。痩せるホルモンとして注目を浴びておりますが、2001年に行なわれたアディポネクチンを治療に使うための研究でも、血中の糖の量を正常にコントロールするインスリン感受性を活性化させたり、脂肪を燃焼させるはたらきが確認され、その効果への期待は高まっています。

アディポネクチンは
善玉コレステロール増加にも関係

高脂血症のもうひとつの要因であるコレステロールについては、その仕組みまでは解明されていないものの、アディポネクチンが増加することで善玉であるHDLコレステロールも増加するという関係性があるといわれています。

また、高脂血症の治療で処方されるフィブラート系薬剤は中性脂肪値を抑える効果がありますが、同時にアディポネクチンを増やすとされています。

脂質代謝に関わる受容体PPARs

抗高脂血症薬などのペルオキシソーム増殖薬によって活性される、たんぱく質受容体PPARs(ペルオキシソーム増殖薬応答性受容体)は、19990年にS.GreentとI.Issemannによって特定されました。PPARsは、脂質代謝におけるリポ蛋白リパーゼ(LPL)やCD36、アシルCoA合成酵素(ACS)の調節をしてると考えられ、研究がされています。

PPARαは肝細胞に対して働き、脂肪酸の取り込みや、ケトン体の生成、アポリポ蛋白の生成などに関与しています。PPARαはリポ蛋白に直接作用し、善玉コレステロールHDLの主要構成蛋白であるアポA-Iの産生を増加させ、血中のHDLコレステロールが増加することがわかっています。このPPARαの活性化剤は、フィブラート系薬剤として抗高脂血症薬として使われています。

PPARγはPPARαとともに働き、リポ蛋白リパーゼ(LPL)やACS、FATPを誘導し、動脈硬化を進めるTG-richリポ蛋白の正常化を促進し、動脈硬化の改善や予防に働いてます。PPARγ活性化剤であるチアゾジリン誘導体(TZD)は、インスリン抵抗性を上げる因子(TFN-α、FFA、レズシチン)を過剰に産生する肥大脂肪細胞を減少させることで、インスリン抵抗性を改善させると考えられています。また、脂肪酸の脂肪組織への取り込みを促進することでも、筋肉や肝臓におけるインスリン抵抗性を改善させることが報告されています。

PPARsとアディポネクチンの高脂血症に対する関係性

PPARγ活性化剤の作用発言におけるアディポネクチン寄与は、アディポネクチン欠損マウスにおけるPPARγ活性化剤の作用の検討とin vitroでの添加実験による直接作用の比較により、PPARγ活性化剤はアディポネクチン依存性の作用と非依存性の作用の両方を介して、インスリン抵抗性・動脈硬化症改善作用を発揮していることが明らかになっている。すなわち、動脈硬化巣における脂質の取り込み抑制はPPARγの直接作用では起こらないことにより、アディポネクチンを介した作用と考えられ、逆にATP-binding cassette A1(ABCA1)などを介したコレステロール引き抜き作用などはアディポネクチンの直接作用では行らいことなどによりPPARγによる直接作用と考えられ、また抗炎症作用などはアディポネクチンを介した作用とPPARγによる直接作用の両方が関与しているものと考えられる。

引用元 岡田健太、石橋俊 5.高脂血症(脂質異常症)とアディポネクチン

PPARγ活性化剤のTZDは、アディポネクチンの血中レベルを増加させることもわかっており、PPARγとアディポネクチンの関係性の研究が進められています。

現在、PPARγの直接作用とアディポネクチンの作用に関しては、動脈硬化における脂肪の取り込み抑制は、アディポネクチンによる作用によるものがわかっています。一方で、PPARγはマクロファージに蓄積した脂質の排出を促進するABCA1を活性化させ、コレステロールの引き抜き作用をもたらしています。この作用はPPARα、PPARγともに、肝X受容体を介して間接的に働きかけていることがわかっており、動脈硬化を予防する身体の防御機能の一つであると言われています。その為、動脈硬化治療の新たなターゲットとしても注目されています。

また、抗炎症作用に関しては、アディポネクチンとPPARγによる直接作用の両方が関係していると考えられていますが、現在も研究が進められています。

アディポネクチン受容体を活用した新たな治療への期待

アディポネクチンの受容体であるAdipoR1は筋肉の党の取り込みや脂肪酸燃焼の促進、AdipoR2は肝臓での脂肪燃焼、糖新生の抑制を媒介しています。マウス実験では、AdipoR1とAdipoR2の量の低下はメタボリックの原因の一部となっていること、アディポネクチン存在下でこれら受容体の活性化や量を増やすことは、PPARαの活性化や抗炎症・抗酸化ストレス作用によってメタボリックシンドロームが改善されることが示されています。また、野菜や果物に含まれるオスモチンはアディポネクチン受容体の作動に関わっていることがわかり、アディポネクチン受容体の作動薬になると考えられています。

こういった結果から、アディポネクチン受容体を活性化させる作動薬や、アディポネクチン抵抗性改善薬の開発は、メタボリックシンドローム、動脈硬化症などの根本的な治療法へ繋がることが期待されています。

糖尿病や動脈硬化にもつながる
高脂血症とは

高脂血症は脂質異常症ともいわれ、血液中の中性脂肪やLDLコレステロールが増えてしまった状態。健康な状態の血液をサラサラ血といったりしますが、高脂血症はドロドロ血という表現がピタリと合います。

高脂血症は乱れた
食生活や運動不足などが原因

遺伝によるケースもありますが、一般的には乱れた食生活や運動不足などが原因。インスリンが足りなくなると血液中の中性脂肪が増えてしまうため、糖尿病と高脂血症は併発することも多々あります。

コレステロールには
善玉と悪玉がある

コレステロールで注意しておきたいのが、LDLコレステロールは悪玉コレステロールということ。身体中にコレステロールを届けてしまう役割があり、血管壁に入り込んで動脈硬化の原因にもなります。

反対に、HDLコレステロールという善玉コレステロールもあって、これは余分なコレステロールを吸収するはたらきがあるのですが、高脂血症では善玉が少なくなって、悪玉が活躍してしまう状態になっているわけです。

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そもそも高脂血症はどんな病気?

高脂血症の症状と原因

血液中にコレステロールや中性脂肪がたくさん溶け込んでいる状態が「高脂血症」です。高脂血症は、動脈硬化を引き起こす大きな要因のひとつで、悪化すると脳卒中や心筋梗塞といった、死に至る病を引き起こすリスクが高くなります。

高脂血症は、初期段階の時点で目に見える症状がありません。そのため症状が進行してから発見されることが多い病気です。

高脂血症の原因は過食・喫煙・飲酒・運動不足・ストレスが大きく関わっており、特にお腹に脂肪がつく「内臓脂肪型肥満」の方に多く見られます。なぜなら内蔵脂肪型肥満の方は、LDL(悪玉)コレステロールと中性脂肪が多く、HDL(善玉)コレステロールが少ない傾向にあるからです。

また血のつながった家族に心筋梗塞や脳卒中を起こした方がいる場合、遺伝的に高脂血症になりやすいので、自身のLDLコレステロール値を定期的に調べるようにしましょう。 高脂血症は遺伝が要因の場合(家族性コレステロール血症)もあります。この場合、生活習慣の影響で高脂血症になった方よりも、LDLコレステロール値が著しく高いのが特徴。親・祖父母・兄弟といった血のつながった家族に高脂血症の方がいる方は、すぐにLDLコレステロール値を確認しましょう。

高脂血症の診断基準

高脂血症を診断する際は、「LDLコレステロール値」「HDLコレステロール値」「中性脂肪値」の検査をします。 これらの検査は空腹時に採血をして実施。LDLコレステロール値が140mg/dL以上、HDLコレステロール値が40mg/dL未満の場合、高脂血症と診断されます。

高脂血症の治療法

食事療法

全ての健康の源は食事療法からはじまります。

まずは「適切な摂取カロリーを守る」「できるだけコレステロールを多く含む食品を避ける」「炭水化物を控える」「塩分を控える」「アルコールを飲みすぎない」の5つを最低限守るようにしましょう。

特にカロリーの摂りすぎには要注意。最近の研究によると、脂質制限よりもカロリーを抑えることが重要だと言われています。

運動療法

高脂血症の運動療法では、有酸素運動が推奨されています。有酸素運動は、酸素を取り込みながら持続的にエネルギーを消費する運動です。筋トレのような無酸素運動より、有酸素運動のほうが脂肪燃焼に向いています。

ウォーキング・ジョギング・水泳・サイクリングなどの運動を、最低でも30分間、週3以上行なうのが理想的です。1分間の心拍数が110~120回だと疲労が溜まりにくいと言われているので、心拍数を測るアプリや時計を活用して、その数値をキープするようにしてください。

薬物療法

LDLコレステロールを下げる薬は、「クレストール」「リバロ」「リピトール」「メバロチン」「リポバス」「ローコール」の6種類

薬を服用して高脂血症の改善を目指します。薬物を服用したからといって、数日で効果がでるということはありません。数ヶ月~数年間は続けるよう注意しましょう。

用語説明

脂質異常症

高脂血症を別名「脂質異常症(ししついじょうしょう)」と言います。

LDLコレステロール

LDLコレステロールは、別名悪玉コレステロールと呼ばれています。動脈硬化を促進して脳卒中や心筋梗塞を引き起こすリスクがある成分です。

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この記事を作るのに参考にした文献・サイト

アディポネクチンの
様々な病気・症状への効果