アディポネクチンと高血圧

高血圧に期待される
アディポネクチンのはたらき

アディポネクチンはメタボリックシンドロームとは浅からぬ関係があることがわかっていて、例えば大阪大学のレポートでは、アディポネクチン濃度の低い人ほど血圧値が高く、逆にアディポネクチン濃度が高いと血圧が低いという負の相関関係があると発表されています。

大阪大学の岩嶋らは、本態性高血圧患者群446名と、年齢、BMI(Body mass index)をマッチさせた正常血圧対照群312名を比較検討し、本態性高血圧患者群に置いてアディポネクチン濃度は優位に低値を示すことを報告した。

この報告では、アディポネクチン濃度は他の因子で補正後も血圧値と負の相関関係を示した。

引用元:門脇孝. "アディポネクチンとその受容体". フジメディカル出版.(2008-06).

参照元:Iwashima Y et al; Hypoadiponectinemia is an independent risk factor for hypertension. Hypertension 43: 1318-1323, 2004

発表に登場する「本態性高血圧」は、原因が明らかな「二次性高血圧」と「白衣高血圧」を除いた、原因のはっきりしない高血圧のことです。この患者と正常な血圧の人を比較したところ、本態性高血圧の患者の方が血中アディポネクチンの値が明らかに低いことが明らかになりました。

それだけにとどまらず、インスリン抵抗性のある患者はない患者に比べて、収縮期血圧・拡張期血圧ともに高くなり、また血漿アディポネクチン濃度も下がる傾向があるようです。

アディポネクチンは
インスリン抵抗性とも相関性も

一方、別な研究ではアディポネクチンと血圧の直接的な関係は確認できなかったものの、インスリン抵抗性との相関性から間接的に関わりがある可能性を示しています。

正常血圧群に限定して血中アディポネクチン濃度と血圧との関係の検討では、HOMA-IR(homeostasis model assessment for insulin resistance)で3.0以上のインスリン抵抗性を有する群、それ未満の群ともに血中アディポネクチン濃度と血圧には有意な負の相関が認められ、低アディポネクチン血症はインスリン抵抗性の存在にかかわらず、独立した高血圧の危険因子であることが示唆された。

引用元:門脇孝. "アディポネクチンとその受容体". フジメディカル出版.(2008-06).

参照元:Iwashima Y et al; Hypoadiponectinemia is an independent risk factor for hypertension. Hypertension 43: 1318-1323, 2004

一定の基準値以上のインスリン抵抗性を持つ人と、インスリン抵抗性の少ない人との比較にて、明らかにインスリン抵抗性・アディポネクチン濃度・血圧には負の関係(インスリン抵抗性が増えると血圧が上がり、アディポネクチン濃度が下がる)ことが実験の結果示されたため、「低アディポネクチン血症は高血圧の危険因子と言える」と示唆されました。

アディポネクチンと高血圧の関係は未だ研究途上ではありますが、アディポネクチンが血管内皮細胞にはたらきかけることによって、血管を弛緩させたり血圧を下げるといった作用があるという報告も。

インスリン抵抗性を下げるアディポネクチンのはたらきによって、高血圧や動脈硬化にも好影響を与えるとする調査結果もある通り、アディポネクチンが血圧をはじめとする「血管の諸症状」に影響する力は非常に大きいと考えられています。

遺伝因子による低アディポネクチン血症と高血圧

現在、低アディポネクチン血症は、インスリン抵抗性を介して間接的に高血圧に関与している可能性が示唆されています。

アディポネクチン遺伝子を外したマウスによる実験では、食塩負荷によってインスリン抵抗性の有無にかかわらず血圧が上昇し、その後アディポネクチン遺伝子を導入したところ血圧が低下したことが報告されています。この結果から、遺伝子因子による低アディポネクチン血症が高血圧の発症に寄与していると考えられます。

ヒトのアディポネクチン遺伝子の解析では、コドン164番目によりコードされるアミノ酸がイソロイシン(Ile)からスレオニン(Thr)に置換された多型(Ile164Thr)のヘテロ接合体が、遺伝的に著明な低アディポネクチン血症を呈することが明らかとなっており、ヘテロ接合体保有者ではアディポネクチンの血中濃度が正常の25~30%まで低下したとの報告もある。興味深いことにこのヘテロ接合体保有者では、高頻度に高血圧、糖尿病、高脂血症、心血管疾患の合併が認められている。

引用:6.高血圧とアディポネクチン 赤坂 憲、宮崎 ●則、古堅 真、石村 周太郎、島本 和明

上記の報告は、特定の対立遺伝子の組み合わせが異なる場合(ヘテロ接合体)、アディポネクチン濃度は明らかに低下することが確認されており、このヘテロ接合体保有者の場合は、高血圧だけでなく他の疾患の合併があったということです。他の検討でも、年齢、BMI、中性脂肪値、HDLコレステロール値、HOMA-IRで補正した後も、ヘテロ接合体保有者には低アディポネクチン血症が認められ、明らかに高血圧の合併が多いことも報告されています。

つまり、遺伝因子によって低アディポネクチン血症が引き起こされ、さらに高血圧も関連して起きていると考えられています。

高血圧とアディポネクチンの関連メカニズム

アディポネクチンは血管内皮細胞からのNO(一酸化窒素nitric oxide)産生を増加させ、血管弛緩作用や血圧低下作用をもたらしている可能性が示唆されています。

重篤な合併症のない本態性高血圧患者202名において、アディポネクチン濃度は駆血後の反応性充血を指標とした内皮依存性血管拡張反応と優位な性の相関を示し、これは他の交絡因子で補正した後も同様の結果であることが報告されている。しかし、アディポネクチン濃度は、ニトログリセリンによる内皮非依存性血管拡張反応とは関連を認めなかったことから、アディポネクチン濃度は内皮依存性に血管拡張反応に関与しいている可能性が示された。

引用:6.高血圧とアディポネクチン 赤坂 憲、宮崎 ●則、古堅 真、石村 周太郎、島本 和明

この実験から、駆血によって血管拡張があった場合にアディポネクチンの濃度は増加し、血管弛緩作用や血圧低下作用をもたらすことが明らかになっています。この背景にあるメカニズムに関してはマウス実験によって、アディポネクチンが複数のリン酸化酵素(AMPキナーゼ・PI3キナーゼ・Akt)活性化を介して、eNOS(内皮型NO合成酵素)を活性化し、血管拡張因子のNOの分泌が促されることで、内皮依存性血管拡張反応を改善し、血圧低下作用を発揮していると示唆されています。

また、低アディポネクチン血症がインスリン抵抗性を介して高血圧と関連している可能性が考えられているということです。正常血圧の若年男性で、本態性高血圧の家族歴を有する群と、有しない群を比較検討したところ、インスリン抵抗性の指標であるISIとアディポネクチン濃度が、本態性高血圧の家族歴を有する群では明らかに低下していたことが報告されています。この結果から、本態性高血圧を発症する前段階で、インスリン抵抗性と低アディポネクチン血症が出現するということが示唆されています。

アディポネクチンを活用した高血圧治療薬への期待

血管内皮機能とは、血管壁の収縮や弛緩をはじめ、炎症細胞の接着や血管透過性、凝固といった機能のことです。低アディポネクチン血症と高血圧の関連には、現在はこの血管内皮機能障害やインスリン抵抗性を介していることが考えられています。

アディポネクチンと高血圧に関しての研究は様々に進められており、炎症を介している可能性や血管壁の肥厚を介している可能性も報告されています。これら複数のメカニズムが相互作用することで高血圧を引き起こしていることも考えられますが、今後詳細なメカニズムが解明されることで、アディポネクチンを活用した高血圧治療薬の可能性が期待されています。

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そもそも高血圧はどんな病気?

高血圧の症状と原因

血管の内側に強い圧力がかかり、血管がダメージを受けてしまう病気を「高血圧」と言います。

高血圧の初期段階では、自覚症状はほとんどありません。「気づかないうちに血圧が上がっていた」というケースがほとんど。症状が進行すると、頭痛・吐き気・めまい・動悸・眠気・目が見えにくいといった症状が出る場合があります。

高血圧でもっとも怖いのが血管の老化現象「動脈硬化」です。動脈硬化になると、脳卒中や心筋梗塞を引き起こすリスクが高くなります。

高血圧の診断基準

実際に血圧を測ることで、高血圧かどうかを診断できます。日本高血圧学会が定めた「高血圧治療ガイドライン2014」を参考にするのが血圧測定の基本。測定した血圧の値が、収縮期140mmHg以上、もしくは拡張期90mmHg以上(140/90mmHg以上)が高血圧の診断基準です。

自宅で血圧を測る場合は、病院で測るよりも低い数値に設定されています。収縮期135mmHg以上、もしくは拡張期85mmHg以上(135/85mmHg以上)の数値が出ると高血圧と診断されます。数値が低く設定されている理由は、病院と比べて自宅のほうがリラックスして測定できるからです。

高血圧の治療法

高血圧治療で主流の「薬物療法」と「食事療法」を紹介します。

薬物療法

高血圧患者のほとんどが、血圧を下げる薬「降圧薬」を使って治療を受けます

降圧薬にはさまざまな種類が存在していますが、カルシウム拮抗薬・ARB・ACE阻害薬などが主な降圧薬の種類です。

他にも水分で血圧を下げる「利尿薬」や、交感神経に働きかけて血圧を抑える「β遮断薬」「α遮断薬」の薬物療法があります。

食事療法

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014年版」によると、1日の食塩摂取量は男女ともに6g未満を推奨しています。ヨーロッパのガイドラインも6g未満ですが、アメリカは4g未満とさらに厳しく設定されているのが特徴です。

塩分制限をしっかり行うためには、調味料選びが重要。塩分は塩・しょう油・味噌・ソース・ケチャップの順に多くなっています。塩やしょう油は、減塩のものを使用するなど工夫しましょう。

外食のメニューでは、塩分が豊富に含まれていることが多いので、スープや鍋物を食べる際はスープを残すなどして、塩分の摂取を控えてください。

用語説明

アンジオテンシン

肝臓・心臓に高い関わりを持つホルモンの一種。血圧を上げる働きがある。

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この記事を作るのに参考にした文献・サイト

アディポネクチンの
様々な病気・症状への効果