アディポネクチンとメタボリックシンドローム

メタボに期待される
アディポネクチンのはたらき

アディポネクチンは脂肪細胞で分泌されるホルモンですが、内臓脂肪が増えるメタボな状態だと、アディポネクチンの分泌量が減ってしまいます。その結果、インスリンのはたらきが悪くなったり、脂肪燃焼やエネルギー代謝なども悪化します

低アディポネクチン血症は
メタボリックシンドロームの頻度と相関性あり

筆者らは検診受信者577人(男性438人、女性139人)および肥満外来受診者を加え計661人(男性479人、女性182人)を対象にメタボリックシンドローム危険因子と血漿アディポネクチン濃度の関係を検討し、報告している。(中略)血漿アディポネクチン濃度は、男女ともBMI、ウエスト径、内臓脂肪面積および皮下脂肪面積、トリグリセライド、収縮期血圧、拡張期血圧、空腹時血糖値および空腹時インスリン値と負の相関を示し、HDLコレストロールと正の相関を示した。(中略)また、アディポネクチン4.0μg/ml未満群は以上群に比しメタボリックシンドロームの危険因子およびメタボリックシンドロームの頻度が有意に高かった。

門脇孝. "アディポネクチンとその受容体". フジメディカル出版.(参照 2008-06).2018/6/21引用

Ryo M et al: Adiponectin as a biomarker of the metabolic syndrome. Cire J 86: 975-981, 2004.2018/6/19引用

メタボリックシンドロームとアディポネクチンの関係性を調べるため、1000人を超える対象者(メタボリックシンドロームの検査または治療に来ている)の血中成分や腹囲、内臓・皮下内臓脂肪面積などを研究者が確認。すると、アディポネクチンが最も低い4.0μg/ml未満の人々は、将来的なメタボリックシンドロームに繋がる可能性の高い「肥満」「糖尿病」「高脂血症」といった危険因子をアディポネクチン分泌量4.0μg/ml以上の人よりも多く持っており、さらにメタボリックシンドロームそのものを発症してしまった人の割合も多いという結果になりました。

アディポネクチンの分泌量が4.0μg/mlを切った状態を「低アディポネクチン血症」と呼びます。アディポネクチン値の平均値が、男性は8.3μg/ml、女性は12.5μg/mlと言われる状態からすると、ずいぶん少ない(低い)のがわかりますね。

内臓脂肪が増えると、アディポネクチンだけでなくさまざまなアディポサイトカイン(アディポネクチンを含めた脂肪細胞から分泌される物質の総称)の分泌異常が起こることが確認されています。また、内臓脂肪の蓄積によるアディポネクチン値低下以外にも、遺伝子変異による低アディポネクチン血症もメタボリックシンドロームと関連していると考えられ、現在も研究や臨床実験が進められています。

アディポサイトカインの分泌異常がメタボを発症する

これまで、エネルギーの貯蔵細胞と考えられていた脂肪細胞でしたが、研究からアディポネクチンやレプチン、アンジオテンシンノーゲン、TNF-α、PAI-1といったアディポサイトカインと呼ばれる生理活性物質(ホルモン)を分泌していることが明らかになりました。そして、このアディポサイトカインの分泌異常が、メタボリックシンドロームの発症に関連していることが示唆されています。

アディポサイトカインは内臓脂肪から分泌され、脂肪代謝や糖代謝に関わっています。しかし、内臓脂肪の蓄積時にはアディポサイトカインの分泌異常が起こり、脂質代謝や糖代謝の異常が起こります。それに伴い、高血糖、高脂血症や動脈硬化といった合併症やメタボリックシンドローム発症をきたしていると考えられています。

内臓脂肪蓄積量に比例して、ほとんどのアディポサイトカイン濃度は増加がみられます。しかし、アディポネクチンだけは、内臓脂肪蓄積に伴い濃度が低下することがわかっています。アディポネクチン血中濃度が低いほど、高血糖、高血圧、脂質代謝異常と言った、メタボリックシンドロームの危険因子が増えていきます。また、複数のアディポサイトカイン濃度の違いと糖代謝や脂質代謝の状態を観察した実験では、メタボリックシンドロームの発症には、複数のアディポサイトカインの相互的作用のバランスの破綻が深く関わっていることが示唆されています。

アディポネクチンの遺伝子変異によるメタボ、動脈硬化への影響の可能性

ヒトゲノムDNA解析による研究では、アディポネクチン遺伝子のミスセンス変異(DNA配列が変化しアミノ酸が置き換わっている状態)やたんぱく質産生のための転写調節に影響する多型(集団の1%以上に認められる塩基の変異)が、メタボリックシンドロームの発症や動脈硬化に関連していることがわかり始めています。

アディポネクチンの遺伝子11391多型と11377多型は、低アディポネクチン血症を引き起こし、2型糖尿病の発症に関わっていることも示唆されています。また、アミノ酸置換を伴った遺伝子変異の中で、Il64T変異は低アディポネクチン血症と優位な相関があり、糖尿病患者で有意に多く認められ、さらにはIl64T異変を有すると高血圧や冠動脈疾患を有する確率も上がることが報告されています。

このように、内臓脂肪の蓄積によるアディポネクチン濃度の低下だけではなく、遺伝子異変によるアディポネクチン濃度の低下がメタボリックシンドロームと関連していることが明らかにされています。

低アディポネクチン血症を引き起こすメカニズムの研究への期待

低アディポネクチン血症はメタボリックシンドロームの発症や病態に深くかかわっています。内臓脂肪蓄積が進むと、アディポネクチンだけではなくアディポサイトカインの分泌異常も起こっているため、これらの背景になる原因やメカニズムの解明、臨床的な根拠や結果の蓄積遺伝子学的レベルも含めて求められています。研究が進むことにより、アディポネクチンやアディポサイトカインを活用したメタボリックシンドロームの予防や改善に有効な方法が明らかになることが期待されています。

アディポサイトカインの分泌異常がメタボを発症する

参考資料:脂質代謝異常とアディポサイトカイン 日生下亜紀 船橋徹 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscc1971b/35/3/35_206/_pdf/-char/ja

脂肪の蓄積と血中アディポネクチン濃度の関係性

脂肪が増えることで、アディポネクチンだけでなく様々なアディポサイトカイン(アディポネクチンを含めた脂肪細胞から分泌される物質の総称)の分泌異常が起こることが確認されています。レプチンやPAI-1、TNFαといったアディポサイトカインの血中濃度はBMIと正の相関性を示し、肥満であればあるほどこれらの血中濃度は増加します。しかし、アディポネクチンはBMIに対して逆相関を示し、肥満状態で血中濃度は低下することがわかっています。

脂肪とアディポネクチンの関係に関しては、肥満者を対象にした実験で、腹部の脂肪量は同じであっても、皮下脂肪よりも内臓脂肪の蓄積量が多い集団の方が、血中のアディポネクチン濃度が低いという結果が得られています。これは、小児であっても成人であっても同様の結果を示しています。つまり、内臓脂肪の蓄積量が、アディポネクチンの低下に重要な関わりを示しているということです。

具体的なアディポネクチンの低下のメカニズムは、まだ研究が進められている段階ですが、アディポネクチンを抑制する因子もわかり始めています。

肥満によって増えるTNFα(アディポネクチンを含めた脂肪細胞から分泌される物質の一つ)は、アディポネクチンを抑制する働きをし、アディポネクチンとTNFαは互いに影響しあっていることが明らかになりました。また、脂肪細胞が肥大化することによって、アディポネクチンが分泌されにくくなることも原因の一つと考えられています。

実際に体重には増減がある?

アディポネクチンの摂取による体重の変化は、多くの人が関心を寄せており、数々の検討や臨床実験が行われています。ただし、現在それらの実験で得られている結果はバラバラです。体重は変わらない、増加する、減少すると様々な結果があり、統一された見解がまだありません。

また、メタボリックシンドロームや肥満者が減量することによる、アディポネクチンの変化に関しても様々な結果報告があり、アディポネクチンと体重の増減に関しては、相関関係が明らかになっておらず、現在も研究が進められています。

アディポネクチンはメタボリックの予防指標に
活用できる

高度肥満者に対する減量実験では、脂肪の蓄積量の減少に比例して、血中のアディポネクチン濃度は増加することが明らかになっていますが、そのメカニズムや要因に関しては現在も研究が進められている状況です。

すでにアディポネクチン濃度の低下によってメタボリックシンドロームのリスクが上がることは明らかになっているため、アディポネクチン濃度を維持、または上げることがメタボリックシンドロームの予防につながることは明らかです。

また、内臓脂肪の蓄積、高血圧、高血糖、脂質異常といったメタボリックシンドロームに関係した病態とアディポネクチンの関係や代謝の仕組みについて研究が進められています。これらの関係が明らかになることで、メタボリックシンドロームの予防や改善に効果的なアディポネクチンの活用を期待できます。

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そもそも
メタボリックシンドロームは
どんな病気?

メタボリックシンドロームの症状と原因

内臓に脂肪がついた内臓脂肪型肥満とあわせて、高血圧・高血糖・脂質異常のいずれかの症状が加わった状態をメタボリックシンドロームといいます。

メタボリックシンドロームは、高カロリーな食生活や睡眠不足が原因で起きる病気です。年齢を重ねるごとに代謝が落ち、脂肪が減りにくくなります。若いころと食事や生活習慣が変わらない人は、見直すようにしましょう。

メタボリックシンドロームになると、動脈硬化の進行が早まり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります

メタボリックシンドロームの診断基準

大まかに2つの基準があります。

メタボリックシンドロームの治療法

ここではメタボリックシンドロームの主な治療法「食事療法」と「運動療法」の目的ややり方、注意点について紹介します。

食事療法

消費カロリーよりも摂取カロリーが上回ってしまうことが、肥満のメカニズムです。食事療法により、摂取カロリーを減らすことがメタボリックシンドロームの治療には欠かせません。

メタボリックシンドロームの人が増えた原因には、「食の欧米化」があります。肉類や乳製品など動物性脂肪の多い食事を避け、もともと日本人が親しんでいた魚や野菜中心の食事に切り替えましょう。

また食べる時間にも注意してください。夜は活動量が少ないため、消費カロリーが高まらない時間です。具体的には、遅くても就寝する2時間前には夕食を済ませて、20時以降はできるだけ食事をしないようにしましょう。

運動療法

運動療法で消費カロリーを高め、脂肪をエネルギーに変えることができます。

運動は有酸素運動がおすすめ。多くの酸素を体内に取り込める有酸素運動は、筋肉を増やしながら基礎代謝を高めることができます。

毎日必死に行なっても体が疲れきってしまっては逆効果。無理をせず、適度に休息を入れながら、週に2~3回を目安に行なうようにしましょう。

いきなり運動習慣を取り入れるのではなく、日常生活のすごし方を少しずつ変える方法をおすすめします。「エレベーターを使わず階段を使う」「電車では座らず立つ」など、生活習慣を意識するだけでも消費カロリーを高められるので、運動が苦手な方こそ、生活を一部変えることから始めてみてください。

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この記事を作るのに参考にした文献・サイト

アディポネクチンの
様々な病気・症状への効果